「論語と算盤と私」を読んで
本書はスタートアップで働く人は一読してみると良いと思う。共感と、為になる思考が身に付く。
- 作者: 朝倉祐介
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/10/17
- メディア: Kindle版
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競走馬の騎士を目指し断念し、東大からコンサル、スタートアップの起業、一部上場企業の代表取締役を経験した著者が、企業活動や企業を取り巻く環境、企業に携わる個人がどうあるべきかをまとめ、自分なりの経営観を整理したもの。
どんな人向けか
個々人の「経営観」を築く参考
経営者、起業を志すひとだでけなく、スタートアップで働くメンバー層や大手企業でスタートアップへの転職等のキャリアに悩む人にも多いに学ぶべきことがある内容だと思う。
と感じたのは、スタートアップとひと口にいっても色々なパターンがあり、またその経営者によって状況というのは大きく異なる。それのメンバーとしてただ受け入れるのでなく、自分で経営者がどう考え、会社の中で自分がどうあるべきかを考えさせてくれる。
各章の気になったところ・どう読んだか
第1章 職業としての経営者とリーダーシップ
企業の成長ステージと経営者に求められるスキルセット・マインドセットを経営者の3類型を定義され、そのステージを前提として経営者に求められるスタイルが語られている。
良い組織というのは、それぞれのが自分の現状の役割よりも一段上の立場の視座を持つことが大事だというけれど、ここでは経営者という「意思決定の難しさ」という改めて認識するとともに、自分の組織のことをまざまざと感じさせらた。
第2章 集団・企業が陥る自己矛盾
上場企業の経営者は従業員と株主の中間管理職という側面があり、異なる利害を持つステークホルダーを同じ方角に向ける務めがある
自己資本のみと、外部資本があるスタートアップを経験した自分としても共感できる内容。
- 「ミッション」とは何のためにその組織が存在するのかを宣言し、進路を指し示す羅針盤となるもの
- 事業にひも付いたミッションの求心力が強いほど、新たな事業への転進が難しくなる
- ミッションの本質は文言そのものよりも、それを伝える過程にこそある
ミッションとは、事業のミッションと組織のミッションの違いとは、ということを丁寧に説明され、ミッションに対する大切さをより深くするとともにそれが持つ役割をもう一段理解することができた気がする。
第3章 起業・スタートアップの環境変化
外部から資本を調達するということは、かように重層的な投資家たちの食物連鎖のなかに組みこまれることを意味する
外部資本のあるスタートアップがほとんどだと思うので、これは本当に業界あるあるかも。
第4章 成熟・衰退期を迎えた企業の処方箋
- 現状に慢心して周囲の環境変化に無関心なままでいると、気づいたときには手遅れるになってしまう
- 低迷の原因の多くは移りゆく環境の変化に対応していない点にあり、誰かの特定の個人が下した決断というよりも、情緒や感情移入に基づく「空気的判断」を積み重ねた結果として、「環境変化に対応しないこと」「変わらないこと」を集団として選択した結果である
- 真に組織の永続的な発展を目指すためには、業績の回復と同等か、あるいはそれ以上に、組織の風土や体質を根本的に改善することにこそ考えを巡らせるべき。これは一朝一夕になし得ることでなく、目の前の事業に関する取り組みを変えるだけでなく、その前提となる思考そのものを改めなければならない
- 細かな経験を積み重ねるうつに、以前はできなかったことがいつしかできる
この章は大手企業だけでなく、中小企業や調達・上場直後のスタートアップ、個人にも当てはまると思う。
第5章 既存企業のイノベーションに対する渇望
軌道に乗っている事業を安定的に運営することと、新たに事業を立ち上げることでは、求められるスキルセットもマインドセットも異なる
新規事業というものをどう実現するかは、明確な答えはないけど、これはその一つの解決方法だと思う。
第6章 資本市場に翻弄されないために
会社の永続的な成長にコミットする経営者と、持ち株の価値の向上を志向する投資家の間で、方向性に対する微妙なずれが生じ得る
企業の目的と手段に関する深い考察。
第7章 個として独立するための原則と心意気
- 苦しいときでも起点の動機が強ければ、その思いが自分の背中を後押ししてくれる
- いつの時代においても、安定を求めることができる対象は、「自分自身」にほかならない。
- 各自が各自なりに、どこに行っても自分の力でやっていける状態をつくり、自己防衛することが、一番安定に資する
この考えかたは現代の日本人には本当に大事なものだと感じた。
最後に
著者の経験談や考えとともに、本書の中に登場する名言・引用が内容にあっており、考えを一段深くさせる。 この本はスタートアップに転職する時に、企業のおかれている状況とその中で経営者、ミッション、VCなどであるべきかの企業選びの視点の参考にもなると思う。